絶対的権力は、絶対的に腐敗する

学院長からのひとこと

香港大火災と、思想家ジョン・アクトンの警告

「Power tends to corrupt, and absolute power corrupts absolutely.」

権力は腐敗しやすく、絶対的権力は絶対的に腐敗する。

この言葉を残したのが、19世紀イギリスの思想家・歴史家

ジョン・アクトン卿(Lord Acton)です。

これは道徳的な断罪ではありません。

権力という仕組みの性質を突いた、冷静な分析です。

そして今、この言葉は香港で起きた大火災によって、改めて現実味を帯びました。

香港大火災は「事故」ではなく「構造の結果」です。

先日起きた香港の大火災について、新聞各紙は次の点を指摘しています。

   •   人災の可能性が高い

   •   建築・設備の安全基準が形骸化

   •   工事における不透明な中抜き

   •   手抜き工事の疑い

問題は「誰が悪いか」ではありません。

なぜ、こうしたことが止められなかったのか。

その答えは、権力構造にあります。

民主派排除が生んだ「反対意見ゼロ」の世界

香港では近年、民主派が完全に排除されました。

結果として残ったのは、

   •   異論が出ない

   •   批判が許されない

   •   監視機能が消えた行政

一見すると、統治はスムーズです。

しかしアクトンは、まさにこの状態を最も危険だと警告していました。

アクトンの核心:人は権力に耐えられない

アクトンの有名な言葉は、しばしば誤解されます。

これは

「権力者は悪人だ」

という主張ではありません。

彼が言っているのは、もっと冷酷な事実です。

どんなに善良な人間でも、

監視されない権力を長く持てば、例外なく判断を誤る。

つまり、

問題は人間性ではなく、構造にあります。

反対派は「敵」ではない、「安全装置」だ

権力を持つ側から見れば、反対派は不快です。

   •   決定が遅れる

   •   手続きが増える

   •   批判される

しかしアクトンの思想では、

反対派こそが権力腐敗を防ぐ唯一のブレーキです。

反対意見が消えた瞬間、

権力は自らを正当化し始めます。

中抜きと手抜きは、必然的に起きる

チェックがなくなれば、次の流れは止まりません。

1. 「これくらいならいいだろう」

2. 「誰も文句を言わない」

3. 「どうせバレない」

こうして

   •   利権が肥大化し

   •   中抜きが常態化し

   •   安全がコスト扱いされる

火災は、その最終アウトプットです。

絶対的権力は、秩序ではなく脆さを生む

強権は「安定」をもたらすように見えます。

しかしアクトンの歴史研究が示したのは逆でした。

   •   反対派がいる社会 → うるさいが壊れにくい

   •   反対派がいない社会 → 静かだが一気に崩れる

硬直したシステムは、衝撃に弱い

香港は他人事ではない

この話を

「中国だから」「香港だから」

で終わらせるのは簡単です。

しかし、

   •   企業

   •   学校

   •   組織

   •   家庭

反対意見が許されない場所では、同じ腐敗が起きる。

規模が違うだけです。

原理はアクトンの言葉通りです。

結論|アクトンが残した最大の教訓

絶対的権力を、完全になくすことはできません。

だからこそ必要なのは、

必ず、反対意見が存在できる構造を残すこと。

面倒な人

空気を読まない人

うるさい批判者

彼らは秩序の敵ではありません。

社会の保険です。

最後に香港の大火災は、

アクトンの言葉が過去の警句ではなく、現在進行形の現実であることを示しました。

絶対的権力は、絶対的に腐敗する。

これは意見ではありません。

歴史と現実が一致した結論です。

 ちなみに、我が国の国会は野党は自由に意見がいえます。

 自民党はいろいろいつも批判されてますが、長く続いています。

結党理念を守ること以外は、自由に発言できる風土があり、反対派をだまらせないからでしょう。

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